事故の瞬間だけ記憶がスローモーションになるのは何故か!?

スローモーション

「事故に遭遇する瞬間は、記憶がスローモーションでよみがえる」そんな話を見聞きしたことはないでしょうか。

普通に日常生活を送っている時、記憶がスローモーションでよみがえることはありませんよね。

ではなぜ事故に遭遇する瞬間など自分の身に危険が及びそうな時だけ、そのような現象が起こるのでしょうか。

この記事では、そんな記憶にまつわる人体の神秘について掘り下げていきます。

なぜ事故の時だけ記憶がスローモーションになるのか?

交通事故

まず考えたいのは、なぜ事故などの危険な時だけ記憶がスローモーションになるのかですよね。

普段スローモーションになったりはしませんから、とても不思議な現象であることに間違いありません。

人体の神秘はまだ解明されていない点が多いのではっきりと断定はできませんが、記憶がスローモーションになるのは迫りくる危険をどうにかして回避するためだと考えられます。

記憶をスローモーションでよみがえらせることで、わずかな時間でどうやったら助かるのかを膨大な記憶の中から探しているのです。

もしも過去に同じような体験をしたり何らかの回避方法を見聞きしていた場合、その記憶を引き出せれば実際に危険を回避できる可能性が高まりますよね。

もしも回避行動を取れなかったら、危険な目に遭って命を絶たれてしまいかねません。

命を失わないためには、是が非でも危険を回避しなければいけないです。

そのためにはいつもと同じ記憶の引き出し方ではなく、短時間で効率的に記憶を引き出さなければいけません。

どうでも良い記憶を引き出すのとは違い、引き出せなければ命を失ってしまうかもしれない危険が迫っている状況です。

回避に効果的な記憶を何が何でも引き出すために、自分の身に危険が及びそうな時は記憶がスローモーションになるのではないでしょうか。

「人は通常時に脳の機能を10%使っていない」という都市伝説もありますが、もしもこれが本当なら自分の身に危険が及びそうな緊急事態にだけ脳が特別なはたらきをするのだとしてもおかしくありません。

やけどするぐらい熱い物をうっかり触ってしまった時の脊髄反射や、さまざまな免疫反応など、人は生き残るための能力をたくさん備えていますよね。

危険が及びそうな時だけ記憶がスローモーションになるというのも、生き残るための能力の一部だといえます。

普通に生活していたらそんな能力が自分にあると自覚しないものですが、いざという時はこうした能力を発揮する可能性があるということです。

記憶がスローモーションになる現象は一般的にどう認識されているのか

事故の時だけ記憶がスローモーションになる現象は、人々にどう認識されているのでしょうか。

人によって認識のされ方はそれぞれ異なりますが、多くの人は「今までの人生が走馬灯のように思い浮かぶこと」だと答えるはずです。

たとえば映画やドラマなどのフィクションで、登場人物の体験した人生が走馬灯のように過ぎていく回想シーンをよく見かけますよね。

これらのシーンを見た記憶があるため、死にそうになる間際だけ記憶がスローモーションになる現象を、人は何となく認識しているのでしょう。

実際は数秒しかないにもかかわらず人生で体験したことを一気にたくさん思い出すのですから、まさに記憶がスローモーションで再生されているといえます。

ただ映画やドラマなどのフィクションでは、危険を回避しようとするよりも人生を振り返る意味合いのほうが強いですよね。

死の危機に瀕している登場人物により強く感情移入してもらうための演出として、人生が走馬灯のように過ぎる回想シーンが差し挟まれるのです。

死という絶望的な状況が目前に迫っているだけに、人生を振り返る回想シーンの効果は絶大です。視聴者は「何とか生き残ってほしい」と、固唾をのみながら物語の結末を見守ります。

映画やドラマなどでこのようなシーンを何度も見かけていれば、死ぬかもしれない瞬間は記憶がスローモーションになるのだと認識しますよね。

その現象をどことなく知っているのは、映画やドラマなどの影響が大きいといえるでしょう。

[ad]

スローモーションと脳の関係性について

脳

事故の時だけ本当に記憶がスローモーションになるのか、記憶を司る脳との関係性についてもう少し深く知りたいですよね。

このテーマに対し、研究に取り組んだチームがあります。

千葉大学文学部の認知心理学研究室が、事故の時だけ記憶がスローモーションになるのかどうかを研究しました。
そしてその現象が実際に起こりえていることを、研究結果として公表しています。

研究室に所属する大学生たち十数人がこの実験に参加したところ、安全な画像と危険な画像を見せた時で脳の判断能力に明らかに差が出たのです。

危険な画像を見せた際は1秒と感じられる時間が長くなり、判断そのものが正確でスピーディーになっているというのですから驚きです。

安全な画像と危険な画像で、脳の反応やはたらきに違いがあるということです。

1秒と感じられる時間が長くなれば、その間にたくさんの記憶を引き出せますよね。

脳の処理能力が一時的に向上することで、その分危険を回避しやすくなります。

普段何気なく生活しているとあまり意識しないことですが、人の記憶というのは信じられないぐらい膨大にあります。

誰もがちょっとしたきっかけで、何十年も前の昔のことをふと思い出したりしますよね。

何十年も前のことなんて普段は忘れていますが、意識すれば思い出せるようになっているのです。

目で見た物や実際に体験したことは、記憶として少しずつ蓄積されていきます。

もちろん完全に忘れてしまうこともありますが、それでもたくさんのことを記憶として覚えているのです。

普段は使わないような記憶でも、もしかしたらそれらの中に危険を回避するためのヒントや答えがあるかもしれませんよね。

もしも1秒に1つの記憶しか思い出せなかったら、助かる確率は低くなってしまいます。ですが脳の処理能力が一時的に向上して1秒に100や1000のことを思い出せれば、その記憶が役に立って危険を回避できる可能性が高まります。

実際にはそう都合よくいかないことのほうが多いでしょうが、それでも何とかして生きようとするべく、脳がフル回転で記憶を引き出そうとするのです。

脳がそのような仕組みになっている可能性があるというのは、思いもしなかったのではないでしょうか。

これは人が生き残るためにはどうすればいいのかを、長い歴史の中で積み重ねてきた結果だと考えられます。

脳についてはまだ解明されていない部分が多いといわれていますが、事故の時だけ記憶がスローモーションになることについてはさらに研究が進められていくことでしょう。

生き残るためにスローモーションの記憶がよみがえる

もしも死が迫るような危機に直面した際、その危機から逃れるためにスローモーションの記憶がよみがえる可能性は十分ありますよね。

この研究に取り組んだチームによって、実際に起こっていることが公表されました。

そもそも以前から映画やドラマなどで死ぬ間際に走馬灯がよぎるシーンはよく表現されていましたが、あながちフィクションの中の話だけではなかったということです。

そのような危機的状況に直面しないのが一番良いですが、万が一そうなっても必死で生きようと脳がスローモーションの記憶をみせてくれます。

それはまぎれもなく人体の神秘だといえるでしょう。