はじめに
「体を張った演技」と聞くと、どんなシーンを思い浮かべるだろうか。
激しいアクション、過酷な撮影環境、あるいは精神的に追い込まれる役柄——。日本映画には、女優たちが「ここまでやるのか」と驚かされる作品が数多く存在する。
本記事では、身体性・精神的負荷・役作りへの徹底したアプローチなど、“演技”の観点から体当たりと呼べる挑戦をした女優30人をピックアップ。各作品における演技の見どころを、ネタバレなしで解説していく。
なお、公開年等の情報は執筆時点のものです。念のため公式情報でもご確認ください。
それでは、1人ずつ詳しく見ていこう。
“痛み”を演技に昇華した2人
最初に紹介するのは、身体的な痛みや変化を伴う役に挑んだ2人。どちらも「見た目の変化」だけでなく、その痛みを内面から表現することで観客の心を掴んだ。役への没入度という点で、日本映画史に残る挑戦といえる。
1.吉高由里子 映画:蛇にピアス(2008)
一言で体当たりポイント:舌ピアス・刺青という”肉体改造”を疑似体験する没入演技
金原ひとみの芥川賞受賞作を蜷川幸雄監督が映画化。吉高由里子は、身体改造にのめり込んでいく主人公・ルイを演じた。
この役が体を張っているのは、単に過激な設定だからではない。ルイという人物が抱える「痛みでしか生を実感できない」という空虚さを、表情と佇まいだけで表現しきった点にある。当時20歳の吉高が、ここまで複雑な内面を持つキャラクターを自分のものにしたことに驚かされる。
演技の観察ポイント
- 表情:虚ろな目と、時折見せる子供っぽい笑顔のコントラスト
- 動き:力の抜けた歩き方、他者との距離感の取り方
- 声・間:感情を押し殺したような低いトーンと、沈黙の使い方
初見向けの見方 序盤のルイの「何も感じていない」ような表情に注目。物語が進むにつれ、その表情に微細な変化が生まれる瞬間を追うと、吉高の演技設計が見えてくる。
同タイプで刺さる人 → 門脇麦の『愛の渦』における”感情を出さない演技”が好きな人に
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2.満島ひかり 映画:海辺の生と死(2017)
一言で体当たりポイント:奄美の自然と一体化する”全身全霊”の存在感
島尾敏雄とミホの実話をベースにした本作で、満島ひかりは戦時中の奄美大島に生きる女性・トエを演じた。
体を張っているポイントは、その徹底した役作り。奄美の方言を完璧に習得し、島の空気を纏うかのような佇まいを獲得した。クライマックスに向けて感情が爆発するシーンでは、理性と狂気の境界線上を歩くような凄みを見せる。
演技の観察ポイント
- 表情:愛する人を待つ切なさと、戦時下の緊張が同居する複雑な顔
- 動き:島の女性として自然に見える所作、海辺での身のこなし
- 声・間:方言のイントネーションに乗せた感情の揺れ
初見向けの見方 前半の「静」のパートで、満島がどれだけ感情を抑えているかを観察してほしい。後半との落差が、この演技の凄さを物語っている。
同タイプで刺さる人 → 安藤サクラの身体性を伴う演技が好きな人に
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【このページのまとめ】 吉高由里子と満島ひかり。2人に共通するのは、「外見の変化」以上に「内面の変化」を身体で表現する力だ。吉高は”空虚さ”を、満島は”抑圧された感情”を、それぞれ全身で体現している。どちらも若手時代の代表作として語り継がれる理由が、ここにある。
