“閉じ込められた感情”を演じる
ここでは、社会や環境に閉じ込められた人物の閉塞感を、抑制的な演技で表現した2人を紹介する。派手さはないが、観る者の心に残る演技だ。
9.門脇麦 映画:愛の渦(2014)
一言で体当たりポイント:”感情を出さない”ことで感情を伝える逆説的演技
三浦大輔監督による密室群像劇。門脇麦は、パーティに参加する若い女性を演じた。この作品で彼女は、多くの出演者の中でも特に印象に残る存在感を見せている。
門脇の「体を張った」は、感情を抑え込むことで逆に強い印象を残す演技術。表情をほとんど変えないのに、内面で何かが渦巻いていることが伝わってくる。その不気味さと魅力が同居した存在感が、彼女をブレイクに導いた。
演技の観察ポイント
- 表情:ほぼ無表情なのに「何かを考えている」と感じさせる目
- 動き:最小限の動きで場の空気を変える存在感
- 声・間:抑揚のない話し方が、逆に不穏さを醸し出す
初見向けの見方 門脇麦の「目」だけを追い続けてみてほしい。他の登場人物を見る視線の動き方に、この役の本質がある。
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10.市川由衣 映画:海を感じる時(2014)
一言で体当たりポイント:言葉にならない感情を”身体の緊張”で表現
中沢けいの小説を映画化。市川由衣は、男性との関係の中で自分を見失っていく女性を演じた。
この役で市川が見せたのは、自己肯定感の低い人間の身体性。肩の落とし方、視線の低さ、声の小ささ——すべてが「自分を大切にできない人」を表現している。派手なシーンよりも、日常の所作にこそ彼女の演技が詰まっている。
演技の観察ポイント
- 表情:相手の顔色を窺うような不安げな目
- 動き:自分を小さく見せようとする身体の縮こまり方
- 声・間:相手に合わせて変化する声のトーン
初見向けの見方 主人公が「嫌だ」と言えないシーンに注目。言葉と身体の不一致を、市川がどう表現しているかを観察すると面白い。
同タイプで刺さる人 → 鈴木杏の自己破壊的なキャラクターが好きな人に
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【このページのまとめ】 門脇麦と市川由衣。どちらも「派手ではないが、深い」演技を見せる女優だ。感情を爆発させるのではなく、抑え込むことで内面を表現する。このタイプの演技は、観る側にも集中力を要求するが、それだけに響いた時の衝撃は大きい。
