精神性を極限まで追い込む演技
次に紹介するのは、役の精神状態に深く入り込み、自らを追い詰めるような役作りをした2人。身体以上に「心」を削る演技だ。
7.趣里 映画:生きてるだけで、愛(2018)
一言で体当たりポイント:躁うつの波を全身で表現した”痛々しいほどの没入”
本谷有希子の小説を映画化。趣里は、躁うつ病を抱えながら恋人と暮らす主人公・寧子を演じた。
この役で趣里が見せたのは、精神的な不安定さを「演技」として制御しながら表現する高度な技術。躁状態と鬱状態、その切り替わりの瞬間を、声・姿勢・目線すべてで表現している。観ている側が疲弊するほどの没入感だ。
演技の観察ポイント
- 表情:感情が制御できない時の目の動き、引きつった笑い
- 動き:エネルギーの有無が姿勢だけで伝わる身体表現
- 声・間:早口とゆっくりした話し方の極端な振れ幅
初見向けの見方 寧子の「調子がいい時」と「悪い時」の演技の違いを意識的に比較してみてほしい。同じ人物なのに、まるで別人のように見える瞬間がある。
同タイプで刺さる人 → 市川実和子の精神的に追い詰められる役が好きな人に
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8.安藤サクラ 映画:百円の恋(2014)
一言で体当たりポイント:体重増減×ボクシング習得の”肉体改造”演技
引きこもり気味の32歳女性がボクシングに出会い、変化していく姿を描いた作品。安藤サクラは主人公・一子を演じ、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した。
体を張っているのは、物理的な肉体改造。撮影のために体重を増やした後、ボクシングのトレーニングで絞り込むという過程を経ている。その変化が、一子の内面的な成長と完全にシンクロしている。
演技の観察ポイント
- 表情:無気力な序盤から、目に光が宿っていく過程
- 動き:だらしない姿勢から、ボクサーの動きへの変化
- 声・間:ぼそぼそした話し方が、徐々にはっきりしていく
初見向けの見方 序盤の一子の「動きたくなさそうな身体」に注目。後半との対比で、安藤サクラがいかに身体全体で役を表現しているかがわかる。
同タイプで刺さる人 → 満島ひかりの全身全霊系演技が好きな人に
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【このページのまとめ】 趣里と安藤サクラ。2人とも「内面の変化を外見で表現する」という点で共通しているが、アプローチは対照的だ。趣里は精神の不安定さを、安藤は肉体の変化を、それぞれ武器にして役を構築している。どちらも「役のために自分を作り変える」覚悟が伝わってくる。
